「昨日まで何ともなかったのに、急に肩が痛くて腕が上がらない」「夜、肩がズキズキして眠れない」——こうした急な肩の痛みは、40〜50代を中心に多いご相談のひとつです。
急な痛みには、様子を見てよいものと、早めに医療機関で検査を受けたほうがよいものがあります。この記事では、理学療法士の視点から、急に肩が痛くなったときの考え方と、痛み始めの過ごし方をお伝えします。
- 急に肩が痛くなる主な原因
- すぐに病院を受診してほしいサイン
- 痛み始め(急性期)の過ごし方と、寝るときの姿勢
- 痛みが落ち着いてきたら始めたい「コッドマン体操(振り子運動)」のやり方
急に肩が痛くなる、主な原因
「急に痛くなった」と感じていても、実際には少しずつ肩への負担がたまっていて、何かのきっかけで痛みが表に出ることがよくあります。主な原因は次のとおりです。
| 考えられる原因 | よくある特徴 |
|---|---|
| 石灰沈着性腱板炎 | 肩の腱にたまったカルシウムが炎症を起こす。夜間などに突然強い痛みが出て、腕を動かせなくなることがある |
| 四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)の初期 | はっきりしたきっかけがなく痛み始め、夜間痛や、腕を上げる・後ろに回す動きのつらさが出やすい |
| 腱板炎・腱板損傷 | 重い物を持った、手をついた、転んだなどの後に痛む。腕を上げる途中で痛む・力が入りにくい |
| 首からくる痛み | 首の神経が原因で肩や腕に痛みが出る。腕のしびれや、首を動かすと痛みが強くなることがある |
| 筋肉の急な緊張(寝違えなど) | 朝起きたら首〜肩が痛い。特定の方向に動かすと痛むが、数日で軽くなることが多い |
どれに当てはまるかは、痛みの出方だけでは判断できません。とくに強い痛みが続くときは、まず整形外科でレントゲンや超音波(エコー)などの検査を受けることをおすすめします。
四十肩・五十肩は「時期」によって対応が変わります
四十肩・五十肩は、一般的に次のような経過をたどるといわれています。今どの時期にいるかによって、適したケアが変わります。
四十肩・五十肩の経過のめやす
- 炎症期:痛みが強く、夜もうずく。無理に動かさず炎症を落ち着かせる
- 拘縮期:痛みは和らぐが肩が固まる。少しずつ動きを取り戻す
- 回復期:動きが戻ってくる。肩甲骨や姿勢も含めて体づくりへ
「急に痛くなった」という段階は、多くの場合この炎症期にあたります。この時期の過ごし方が、その後の回復にも関わってきます。
すぐに病院を受診してほしいサイン
次のような場合は、整体やセルフケアの前に、医療機関を受診してください。
- 転倒やぶつけた後から痛む
腕がほとんど上がらない - 肩が赤く腫れている・熱をもっている
発熱をともなう - 腕や手にしびれ・力の入りにくさがある
- 胸の痛み、息苦しさ、冷や汗をともなう
左肩の痛みは心臓が関係していることも - 安静にしていても痛みが強くなる一方
夜も眠れないほど痛い - 皮膚に発疹や水ぶくれが出ている
とくに胸の痛みや息苦しさをともなう場合は、肩の問題ではない可能性があります。迷わず医療機関に相談してください。
痛み始め(急性期)の過ごし方
痛みが出てから数日〜1週間ほどは、炎症が強い時期です。この時期は「動かして治す」よりも、炎症を落ち着かせることを優先します。
痛い動きは避け、できる範囲で過ごす
痛みが強い時期に、無理に腕を上げたり、ストレッチで伸ばしたりすると、炎症が長引くことがあります。一方で、まったく動かさないと肩まわりが固まりやすくなります。
- 腕を頭より上に上げる動きは控える
洗濯物を干す、高い棚の物をとるなど - 重い物は痛くない側で持つ
買い物袋やかばんも反対の手で - 肘から下は普段どおり動かしてOK
手首や指、肘の曲げ伸ばしは血流のためにも大切 - 痛みが強いときは我慢しすぎない
痛み止めの使用は医師・薬剤師に相談を
冷やす?温める?
肩が熱っぽい、ズキズキ脈打つように痛むといった急な痛みの直後は、冷やすと楽になることがあります。保冷剤をタオルで包み、1回15分ほどを目安にしてください。
一方、熱感がなく、こわばりや重だるさが中心であれば、入浴などで温めたほうが楽になる場合もあります。冷やしたり温めたりして痛みが強くなるようであれば中止し、判断に迷うときは医療機関や専門家に相談しましょう。
寝るときの姿勢を工夫する
急な肩の痛みは、夜にとくにつらくなりやすいのが特徴です。寝る姿勢を少し変えるだけで、肩への負担を減らせることがあります。
仰向けで寝るとき
痛い側の肘の下に、たたんだタオルやクッションを入れる。腕が後ろに落ちないようにするのがポイント
横向きで寝るとき
痛い側を上にして、クッションや枕を抱えるようにする。腕の重みが肩にかかりにくくなる
やってはいけないこと
- 痛いところを強く押す・もむ
- 痛みをこらえて、腕を大きく回す・伸ばす
- 「動かさないと固まる」と考えて、痛みが強いのに運動を続ける
良かれと思ってしたことが、かえって炎症を強めてしまうことがあります。痛みが強い時期は「痛くない範囲で過ごす」を基本にしてください。
痛みが落ち着いてきたら
炎症が落ち着き、安静にしているときの痛みや夜間痛が軽くなってきたら、少しずつ肩を動かしていく時期に入ります。ここで急に元通り動かそうとすると、痛みがぶり返すこともあるため、段階を踏むことが大切です。
このとき、肩への負担が少ない運動としてよく使われるのが「コッドマン体操(振り子運動)」です。
コッドマン体操(振り子運動)とは
体を前に倒し、力を抜いてぶら下げた腕を、振り子のように小さく揺らす体操です。腕の重みを利用して肩の関節をやさしく動かすため、腕を自分の力で持ち上げる運動に比べて、肩まわりの筋肉や腱への負担が少ないのが特徴です。肩の手術後のリハビリや、四十肩・五十肩の運動療法などでも広く取り入れられています。
安静にしていても痛む・夜も痛みで目が覚める、といった炎症が強い時期は行いません。痛みが落ち着いてきてからが目安です。医療機関に通院中の方は、運動を始めてよいか医師に確認してください。
やり方
コッドマン体操の手順
- テーブルや椅子の背に、痛くない側の手をついて体を支える
- 足を軽く開き、上体を前に倒す(無理のない角度でOK)
- 痛い側の腕は力を抜いて、だらんと真下に垂らす
- 体を小さく前後に揺らし、その反動で腕を前後に揺らす(10回)
- 同じように左右に揺らす(10回)
- 小さな円を描くように、右回り・左回りに揺らす(各10回)
円の大きさは、直径30cmくらいの小さな円から始めます。回数は1日1〜3回を目安に、痛みのない範囲で行いましょう。
うまく行うためのポイント
- 腕の力は抜いたまま
腕で回そうとせず、体の揺れで腕が自然に動くようにする - 肩をすくめない
首や肩に力が入っていないか確認する - 体が温まっているときに
入浴後など、肩まわりが温まっていると動かしやすい - おもりは自己判断で持たない
負荷を増やすかどうかは専門家と相談する
- 体操中や体操後に、痛みが強くなる
- 腕や手にしびれが出る
- 翌日まで痛みが残る・夜の痛みが増える
「少し痛いくらいがよく効く」ということはありません。痛みを我慢して大きく揺らすと、かえって炎症がぶり返すことがあります。小さく、ゆっくり、気持ちよく動かせる範囲で続けることが大切です。
痛みを繰り返さないために——肩甲骨と姿勢
肩の関節は、肩甲骨や背骨、首の動きと連動しています。猫背で肩が前に入った姿勢が続くと、腕を上げるときに肩の中で腱がこすれやすくなり、負担がかかります。
肩に負担がたまる流れ
- 猫背・巻き肩の姿勢が続く
- 肩甲骨の動きが小さくなる
- 腕を上げるたびに肩の中で負担がかかる
- 炎症や痛みが起こりやすくなる
痛みが落ち着いた後は、肩だけでなく、背中や肩甲骨の動き、日頃の姿勢も一緒に見直すことで、再発しにくい体づくりにつながります。
かんだ整体院でできること
かんだ整体院では、理学療法士が肩の動き方や姿勢、肩甲骨・背骨・首の状態を確認し、肩に負担がかかりにくい体の使い方をサポートしています。ボキボキと鳴らすような強い施術は行いません。
強い痛みがある場合や、受診が必要と考えられる場合は、まず医療機関での検査をおすすめしています。「病院では異常がないと言われたけれどつらい」「痛みは落ち着いたが、動かしにくさが残っている」といった方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問
急に肩が痛いとき、整体に行っても大丈夫ですか?
転倒などのケガの後や、腫れ・熱感・しびれがある場合は、まず医療機関を受診してください。検査で大きな問題がないと分かっている場合や、痛みが落ち着いてきた段階であれば、状態を確認したうえで施術を行います。
四十肩・五十肩は、放っておけば治りますか?
時間とともに痛みが軽くなることも多いですが、肩が固まって動かしにくさが残る場合があります。痛みの時期に合わせて、無理のない範囲で動きを取り戻していくことが大切です。
湿布は冷たいものと温かいもの、どちらがいいですか?
熱っぽさのある急な痛みには冷たいタイプ、こわばりが中心なら温かいタイプが使われることが多いです。肌に合わない場合もあるため、迷ったときは薬剤師に相談してください。
まとめ
急な肩の痛みは、炎症が強い時期に無理をしないことが一番の近道です。まずは受診が必要なサインがないかを確認し、痛い動きを避けながら、寝る姿勢などを工夫して過ごしましょう。痛みが落ち着いてからは、肩甲骨や姿勢も含めて体を整えていくことで、痛みを繰り返しにくい体づくりにつながります。
参考文献
- 日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」症状・病気をしらべる
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html - 日本整形外科学会「石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)」症状・病気をしらべる
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/calcific_tendinitis.html - 日本整形外科学会「肩腱板断裂」症状・病気をしらべる
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rotator_cuff_tear.html - American Academy of Orthopaedic Surgeons(OrthoInfo)”Shoulder Surgery Exercise Guide”(Pendulum, Circular/Codman’s Exercises)
https://www.orthoinfo.org/recovery/shoulder-surgery-exercise-guide/ - Harvard Health Publishing “7 stretching & strengthening exercises for a frozen shoulder”
https://www.health.harvard.edu/stretching-exercises-frozen-shoulder
